2020/06/13
風邪の治療は、仕事を1日でも休みたくないような人の場合、西洋医学の薬を飲んで、熱や頭痛、鼻水など、個々の風邪症状を抑えることになりますが、この方法だと、風邪を引いている期間は短くなりません。
一方、2〜3日休養することができて、しかも1週間後には風邪の症状をなくしてしまいたいと言うような時には、漢方薬を試すとよいでしょう。
漢方薬では、体が自然に治ろうとする力を助け、風邪を引いている期間を短くする効果が期待できます。
個々の風邪に合わせて処方
漢方薬の種類は、一口に風邪と言っても、その症状や程度、引き始めかどうか、などによって異なります。
例えば、風邪の引き始めで、寒気や発熱があり、肩や首筋が張っているが、汗はかいていないような状態の時には葛根湯(かっこんとう)がよいでしょう。
また、インフルエンザのように高熱が出て、体の節々が痛む場合は麻黄湯(まおうとう)、のどがチクチク痛むような、風邪や咳が長引く風邪には桂麻各半湯(けいまかくはんとう)がよいとされています。
さらに、水っぽい鼻水やくしゃみ痰がある時には、小青龍湯(しょうせいりゅとう)が効くとされています。
なお、西洋医学の薬と漢方は、一緒の飲むのはあまり好ましくありません。
なぜなら、例えば漢方では熱を上げて免疫力を高めるのに対して、西洋医学の解熱剤では、熱を下げるというように両者の薬の作用は全く異なるからです。
そこで、漢方薬を飲んでいて、どうしても一時的に症状を抑えたい場合に限って、西洋薬を飲むようにするといいでしょう。
ウイルス性胃腸炎にも、漢方薬を使うことがあります。
特に腹痛と発熱、下痢を伴う腸炎には黄芩湯(おうごんとう)を使うことで症状が軽くなり、早く治った例が少なくありません。
黄芩湯には、黄芩のほかに、大棗(たいそう)、芍薬(しゃくやく)、甘薬(かんぞう)が含まれています。
また、嘔吐や下痢で脱水症状になり、口が渇いて尿の量も減っている時には五苓散(ごれいさん)を飲むと、点滴をしないで済むことが多いのです。
ところで、漢方薬はすぐに効かないようなイメージがあるようですが、実はそうではありません。
症状に適した薬を飲めば、服用してから30分くらいで、体が楽になるのが感じられるはずです。逆に1日たっても楽にならないようなら、再度医師を訪ね、相談してみるといいでしょう。
風邪や胃腸炎のほかにも、漢方を試す価値のある症状はいろいろあり、例えば加齢による夜間頻尿、手術を必要としない軽い前立腺肥大や白内障は、八味地黄丸(はちみちおうがん)で症状が和らいだり、進行を遅らせたりすることができます。
漢方医学は、(前人的)な医学であると言われています。
つまり漢方では、患者の訴える症状だけを診るのではなく、冷え性か汗かきかなどといった体質を含めて患者を診断し、それに適した薬を処方します。
そこで、漢方薬を試してみたい人は、自己診断で薬を飲まずに、必ず漢方に詳しい医師に相談して始めましょう。