2020/06/13
日本人の死因の3位を占める脳卒中。
脳の動脈が閉塞したり狭窄してしまう脳梗塞は、日本人の高齢化が進むにつれて、さらに増えると予測されています。また、脳梗塞は麻痺や意識障害などを引き起こす以外にも、認知症(脳血管性認知症)の原因となることも知られています。
2005年、静脈内投与製剤のアルテプラーゼ(t―PA)が日本でも承認され、脳梗塞治療が大きく変わったと言われています。
この薬については、一般誌で取り上げられることも多く、脳梗塞を発症しても後遺症なく社会復帰できるようになったと考えている人も多いのではないでしょうか?
しかし、t-PA自体も脳梗塞の発症から3時間以内に投与する必要があるなど、万能薬ではなく、その効果にしても、ほぼ障害なく退院できる患者の割合を2割から3割強に引き上げた程度にとどまります。
2005年、静脈内投与製剤のアルテプラーゼ(t―PA)が日本でも承認されても、脳梗塞は依然として予防が重要な症患なのです。しかも脳梗塞は一度発症すると、それ自体がリスクとなり再発時は症状が悪化します。
あきらかな再発以外にも、知らないうちに無症候性脳梗塞(いわゆる隠れ脳梗塞)が増加し、認知機能や歩行機能が低下することもあります。
脳梗塞をはじめとした脳血管障害を予防するためには、コレステロールや血糖値、血圧の管理、喫煙や過度の飲酒を控えるなどが必要です。
しかし、その中でも最も重要と考えられるのが、血圧の管理なのです。
家庭での測定値を基準に管理
脳梗塞を予防するために目指すべき血圧の値として、日本血圧学会のガイドラインでは140/90mmHg未満と推奨されています。しかし、ここで示された値は医療機関で測定する際の基準であり、脳梗塞のリスクを正しく評価できないことが分かってきています。
なぜなら、健康な人は、就寝時に血圧が下がりますが、症状がないのです。
無症候性の脳梗塞も含めて、脳梗塞を発症した経験を持つ人は、就寝時に血圧が下がらない場合が多く、上がることもあるのです。
そのため、医療機関で計測した値に関係なく、「大丈夫」と思っていても、実は十分に降圧されていないこともあるわけです。
基準となる血圧は、家庭で測定したものを利用すべきなのです。
測定の際は、24時間測定するのが望ましいですが、夜寝る前や朝起きてすぐの血圧を測定することでも代用はできます。
ある245人を調査したデーターでは、家庭血圧での収縮期血圧(最大血圧)が135mmHg以上の患者では、脳卒中再発は10倍以上、認知症の発症も20倍近いリスクが認められたそうです。
血圧を下げ過ぎると、「何となく体が重い」「ふらふらする」などの症状が表れることもあります。
まずはしっかりと降圧してから、問題のない水準を探っていくようにしたいものです。