2020/06/13
高齢化に伴い、認知症の患者数は年々増加の一途をたどっています。
2005年には約190万人、団塊の世代がすべて高齢者となる2015年には、250万人に上ると言わています。
認知症は、年相応のもの忘れと違って、脳や体の疾患が原因で記憶や判断力などの障害が起こる病気です。
脳血管性認知症などいくつか種類がある中で、半分近くを占め今後も増加することが予想されるのが、脳の神経細胞が急激に減ってしまうアルツハイマー病です。
アルツハイマー病になると、記憶や判断能力が徐々に低下していき、自立した社会生活を送れなくなってしまいます。残念ながら、現時点では失った機能を戻すような治療法はありません。
しかし最近、早いうちから薬を飲んだり、生活に運動や趣味などの活動を取り入れて、家族や介護者がサポート体制を作ることで、症状の進行を遅らせることができると分かってきました。
そのために、いかに早い段階で疑わしい症状を見つけるかが、重要な課題になっています。
最も期待されるのが、家族による気づきでしょう。
では、特にどんな症状があった場合に認知症(主にアルツハイマー病)を疑えばよいのでしょうか。
認知症というと、徘徊や不潔行為などの分かりやすい異常行動を想像しがちですが、初期にはこういう症状が出るわけではありません。
老化による物忘れとの大きな違いは、物忘れは経験したある出来事の記憶の一部を忘れるのに対して、認知症は出来事の大部分を忘れてしまう点です。
例えば、年齢相応の物忘れでは朝食に何を食べたかは大体覚えていますが、認知症では、ご飯と味噌汁くらいしか思い出せないといったものです。
昔の記憶や知識・情報の記憶は比較的保たれるものの、新しい記憶や自分が何かを体験した記憶は、忘れやすいのも認知症の特徴です。
物をすぐになくすには要注意
認知症を疑ったエピソードを聞くと「同じことを何度も尋ねる」「物をなくす」「以前は興味があったことに関心が薄くなってきた」と言った症状が群を抜いて多いのです。
こうしたエピソードがあれば初期の認知症が疑われるため、一度受診をお勧めします。
最近は、気軽に相談できる物忘れ外来が各地に増えており、まずはかかりつけ医に相談し、そこから紹介してもらうのも手です。
診断のためには、本人や家族への詳しい問診、記憶障害や認知機能の低下を調べる為の検査をし、疑わしければさらに、脳の画像検査などを行うことになるでしょう。
認知症では、残された脳の機能をなるべく長く維持することが治療の目的となるため、薬物療法だけでなく、生活習慣の重要性も注目されています。
適度の運動、魚やビタミンE、野菜を含むバランスの良い食事、趣味を大切にする生活などは、認知症を予防したり進行を遅らせるのに効果的です。