2020/06/13
急性心筋梗塞は、心筋(心臓の筋肉=横紋筋)へ酸素と栄養を運んでいる冠状動脈に血栓が詰まり、血液が行き渡らまくなることで、心筋の細胞が壊死してしまう病気です。
日本にはおよそ15万人もの患者がおり、毎年5万人弱の人が死亡すると言われています。
その病状は約30分以上にわたって、前胸部に強い痛みや締めつけ感圧迫感が続きます。
痛みのために冷や汗や吐き気、嘔吐、呼吸困難などに陥るため、恐怖感や不安感を伴うことも多くなります。
心筋梗塞を引き起こす原因となるのは、話題のメタボリックシンドローム(代謝症候群)にも代表される、高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満に加えて、喫煙、過労、ストレス、睡眠不足や遺伝的素因などが挙げられます。
もちろん直ちに生活習慣を改め、治療できるものは治療し、原因を取り除くことが、先決であることは言うまでもありません。
発作後2時間以内に治療を
急性心筋梗塞になった場合、発作後2時間以内に閉塞した冠動脈を再び開通させる「再灌流手術」といった適切な処置をすれば、その死亡率はわずか6%〜7%にとどまります。
そのために、迅速な治療が求められているわけです。
また、日頃からかかりつけの医者を訪ね、健康状態を知ってもらっておくのも大切なことです。平常の心電図の記録があれば、発作時に役に立ちます。
こうした背景から、治療の現場でIT(情報技術)の活用が始まっています。
あるクリニックを例にすると、手のひらに収まるほどの小さな装置を使ったシステムです。
この装置を携帯し、夜間や外出先、運動中でも胸などに不調を感じたらその場で約30秒間握ります。
するとすぐに心電図が取られ、そのデーターが内蔵されたPHSを通じて、リアルタイムで受診診断部門(心機能室)に送信されます。
送信にかかる時間はわずか30秒ほどだそうです。
24時間態勢で待機する心臓専門医がデーターを診断し、すぐに病院に行くべきか、後日の健診でも大丈夫なのかを判断し、そのクリニックを経由して本人にフィードバックするというものです。
伝送から専門医の診断まで原則10分以内であるため、緊急対応が必要な場合に力を発揮します。
こうしたシステムの利用も今後は視野に入ってくることでしょう。
そのクリニックでシステムを運用し始めて約1年、緊急時にも症状や容態によって、迅速かつ的確な対応が可能になり、既に命を救われた人もいるそうです。
患者さんは急な発作への備えができ、いたずらに不安感を持たずに済むようになったということです。
現在は関東周辺のそのクリニックと、そのグループの会員向けのサービスのようですが、今後は徐々に全国へ普及させていく予定のようです。
遠くの親類より手のひらに収まる装置の方が頼りになる時代かもしれませんね。