2020/06/13
新年度を迎えると、定期健康診断が行われます。
労働者の健康診断は、働く人の職場での安全と健康を確保するために定められた労働安全衛生法や労働安全衛生規則が、事業主に義務づけているものです。
健康診断の中身は、身長・体重の計測、採血や血圧測定、心電図検査、胸部のレントゲン撮影などが一般的なところでしょう。
事業所の方針で、年齢によって胃X線検査や便潜血、腫瘍マーカー検査などが追加されることもあります。
検査を受けた日からおよそ1ケ月で、結果が受験者(健康診断を受けた人)に返され、そこにはたくさんの数値と基準値が並んでいます。
もし、検査結果が基準値の範囲を超えていても、ただちに異常となるわけではありません。
健康診断を実施した医師は、問診の内容(自覚症状の有無や医療機関の受診歴など)や診察所見を参考に、検査項目ごとに「異常なし」「要観察」「要治療」の判断をします。
ところが、この健診データは、受検者に活用されていないのが現状なのです。
厚生労働省の調査から、以下のような構図が浮かび上がってきます。
健康診断の受検対象者を100人とすると、受検者は80人を上回ります。
そのうち32人になんらかの所見(検査で正常ではないと判断されたもの)がみられますが、約20人は自覚しておらず、自覚のあった人でも、医療機関を訪れた人は6割程度だったということです。
また、糖尿病、高脂血症、高血圧の疑いのある人は、健康診断後の受診率が低迷しています。
ちなみに、受診しない理由を調査したところ、自覚症状がない、(疾者は)大したことはない、が上位をしめていました。
中年に増える心疾患死亡率
せっかく受けた健康診断の結果を、そのまま放置しておくのでは意味がありません。
特に、心筋梗塞や脳卒中など心臓や脳血管の病気で亡くなる人が増えており、30代の死亡者は6.5人に1人、40代の死亡者では5人に1人となっているのです。
心臓や脳血管の病気を引き起こすと、その後の生活の障害も大きいものです。
脳卒中を起こした人が職場に復帰する率は30%未満だと言われています。
心臓病や脳血管の病気を引き起こす危険因子には、肥満(内臓に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満)、高血圧、高血糖、高脂血症があります。
これらが複数ある状態は、メタボリックシンドローム(代謝症候群)と呼ばれ、危険因子の数が増えるほどリスクが高まります。
2001年には、労災保険法の改正に伴い、定期健康診断で内臓脂肪型肥満、高血圧、高血糖、高脂血症のすべてに所見が見られた場合、より詳しく調べる2次検査の費用や特定保健指導の費用が労災保険から給付されるようになっています。
もし、健康診断で病気の疑いが見つかった場合には、手遅れに前に医療機関を訪れ、治療を始めるなど早めに対策を取るようにしましょう。